ADVANCE KEYBOARDS Interview
多数のアニメソングの制作を手がける音楽プロデューサー「佐藤純之介」氏に、現在使用していただいているAKAI Professional「ADVANCE61」について、弊社中村がインタビューをさせていただきました。
無限の可能性を持っている「ADVANCE KEYBOARDS」シリーズの全貌が明らかに!
省スペースで高性能なセミウェイト鍵盤
佐藤純之介氏(以下、純之介):まず気に入っているところは鍵盤ですね。あとはピッチベンドだったりノブのスムーズさが気持ち良いですよね。
中村:実際にADVANCE61をマスターキーボードとして使用していただいてますが、現在はどんなシステムで作業をされているんですか?
純之介:今はProTools HDがメインになりまして、ソフトシンセ等をバックに立上げて、そしてADVANCE61を使う前は別のキーボードを使っていたのですが、49鍵だったので、ずっと省スペースで高性能な61鍵を探していたんです。しかしピッチベンドが鍵盤の横にあったりで。
中村:一般的にピッチベンドは鍵盤の横になりますが?
純之介:設置上、横幅をとり過ぎちゃうので省スペース化のためです。なんて考えている時にADVANCE61を知ってこれは!と。セミウェイト鍵盤もバッチリです。
中村:セミウェイト鍵盤ですよね。では実際、セミウェイト鍵盤がマッチする音色なんてどうです?
純之介:生ピアノからシンセまでバッチリです。ADVANCE61をマスターにしてProphet-VやEmulatorのソフトシンセを弾いても演奏している感がしっくりきます。手応えがしっかりあるのでピアノでも感情移入しやすいです。逆にオルガンなど通常ペラペラの軽い鍵盤の音色でグリッサンドしても痛くなくて良いですね(笑)
中村:実際に鍵盤、パッド、ノブとありますが、やはりメインで使うのは鍵盤ですよね?
純之介:そうですね。やはり鍵盤がメインです。
中村:ノブはどうですか?
純之介:まだやっていないのですが、OBERHEIM MATRIX1000やWaldorf MICROWAVEなどのハード音源のMIDIコントロールをアサインできれば良いですね。例えば、MICROWAVEのプリセットを作成してフィルター、レゾナンス、エンベロープ等アサインしてコントロールし、ADVANCE61からエディットを。画面もエディット時に見れるから作業がスムーズになりますね。ProTools経由にすればその情報も残るしばっちりです。
付属ソフトウエア「VIP」
中村:ADVANCE61にはVIPというソフトが付属していて、VIP上で、インストールされているVSTインストゥルメントを呼び出せます。スタンドアロンでの起動はもちろん、VST、AU、AAXプラグインとしても動作しますので、DAWの中でVIPをプラグインとして使用できます。
純之介:これは便利ですね。
中村:はい、凄く便利です。VIPはインストール後にコンピューターに入っているプラグインをサーチしにいきます。その後、プラグインマネージャーで全部見ることができます。この中で使用するプラグインにチェックを入れます。
純之介:これはわかりやすいですね。ダイレクトで使いたいプラグインはチェックを入れなければ良いですね。
中村:今サーチした結果は18,770音色あります。ここからお好みのフィルターをかけていくと音源は絞られます。例えば「Acoustic」→「Key」とフィルターをかけるとStructureが出てきました。
純之介:Structureてサンプラーじゃないですか。Structureの音源が立ち上がったってことですか?
中村:そうです。
純之介:立ち上がる時間が早いですね!単体でStructureを立ち上げるより早いかも。単体で立ち上げてメニューから音色選んでってやるより断然早いですね。
中村:大きいバッファーを持ってますのでプレイしながら次の音色に変更しても「ブツッ」と途切れずプレイできます。
純之介:「ブツッ」て、これ結構あるんですよね…。これはどのメーカーのプラグインでもサーチすればリスト化されるんですか?
中村:はい。自社ソフトに限らずKOMPLETEもARTURIAも、もちろんフリーソフトも全部リスト化されます。例えばこの101のフリーソフトを選択すると…。純之介:もうパラメーターがアサインされてる!
中村:そうなんです。あとはお好みの場所に入替も可能です。今ディケイが当たっているノブをアタックに変更したりも簡単です。
純之介:MIDI Learnがソフトウェアだけでできるのは便利ですよね。
中村:このように即興性に強いのがADVANCE61の強みですね。MIDIキーボードですけど、反応が速いので、ライブでハードシンセサイザーのように使えます。お好みのセットをプリセットに入れておけばすぐに使用できますし、さらに最大8つまでの音源をレイヤー化可能です。
純之介:ますますハードシンセみたい。80年代の音楽に目立つレイヤー感が凄くイメージできますね。やはりシンセの醍醐味はレイヤーです(笑)
中村:マルチモードやスプリット等、便利な機能がたくさんです。
純之介:凄い!
中村:VIP上からソフトウェアを購入することもできます。
純之介:これも凄い!あと凄いと思ったのがバンドルソフトも凄いですよね。大好きなHybrid3もあるし。
中村:ハードとソフトの融合された完成形です。
DAWソフト上でのVIP
中村:では、Ableton Live上でVIPを使用してみましょう。このセッティングで弾いてみてください。
純之介:VST感覚で使えますね。今弾いてて感じたんですが、このノブは解像度128ですよね?
中村:もちろんそうです。ノブ自体が大きいので微調整がやりやすいですね。
純之介:解像度がもっと高く感じますね。あとAKAI伝統のカニの十字キー。これは代々使ってきているので親近感が沸きます。
純之介:ついでにもうひとつですが、ADVANCE61の下部にMacキーボードのケーブルが噛まずに通せる!これがなかなか無いんですよ。話しがそれました(笑)
中村:なるほど…それは気がつきませんでした。
純之介:例えばプラグインを呼び出して、この音色をプリセット名を付けて残す事はできますか?
中村:できます。プラグイン側に残したいならばプラグイン側にセーブ、VIPにセーブするならインポートインディビジュアルプリセットにもう一度持っていくとセーブできます。その後もう一度スキャンすれば呼び出されます。
純之介:これは便利!
中村:ではCubase上でVIPを使用してみましょう。Cubaseのトラック上にVIPを4つ立ち上げました。
純之介:これも凄いですね。パートごとにも使える。
中村:ここではアルペジエーターを使用しながら録音してみましょう。
純之介:良いですね。しっかり書き出されてますね。アルペジエーターのパターンも多いですね。
中村:アルペジエーターってDAWと使うとズレまくって使えないじゃんってなるんですけど、VIP上で使えば完璧です。
純之介:完全にトラックメイキングで使えますね。グリッドもキレイに出てますね。
中村:パラメーターはノートレングス、パターン、スイングになります。
純之介:スイングを変えてDAWに取り込むのは面白いですね。ProToolsはこのようなテクノな事は弱いので活用できますね。
純之介:いや〜ほんとに良いですね。プロのアレンジャーの方や、劇伴作家の方でもProToolsで打ち込みされる方は意外に多いので、どんなDAWでもいけるのは強みですね。作業を楽しくさせてくれる機材ですね。
中村:ありがとうございました!
プロフィール
佐藤純之介
株式会社アイウィル音楽制作プロデューサー。 1975年大阪生まれ。YMOに憧れ90年代後期よりテレビや演劇の音楽制作の仕事を始め、2001年に上京。レコーディングエンジニアとしてJ-POPの制作に参加した後に、2006年アニソンレーベル、株式会社ランティスに入社、2011年ランティスの音楽制作部が独立した株式会社アイウィルに転籍。現在はプロデューサー、ディレクター、エンジニアとして、アニソンを中心に年間約300曲以上の制作に携わる。
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